月別アーカイブ: 2017年4月

【カナダ】氷山がやってきた?

以前、北海道の流氷のことを書きましたが、リュウヒョウとはどういうものなのか、知らない人も多いと見えて、自分が見たことがあると話すと、氷が海の上を流れているんですか、と聞き返されることがよくあります。春先に、山の融雪が川を流れてゆく光景を思い浮かべているのかもしれません。

これに対し、氷山というものがあります。流氷とは、地球の寒帯地方でできた、海面上の氷が、低緯度の地域に流れて(押し出されて)くる現象のことですが、氷山とは氷河の末端が海に落ちて、山のような姿で海上を漂っているものを指します。流氷が、どちらかといえば平面的なのに対し、氷山は立体的であることがわかると思います。また流氷は、気温・水温といった気候条件がそろえば、比較的広い範囲で発生可能と思われますが、氷河の存在が必要条件である氷山が見られる場所は、かなり限定的といえます。

子供のころ何かの本で、南極の氷山はテーブル状で、北極の氷山は山の形をしている、と書かれていたのを読んだ覚えがあるのですが、山といっても高さはせいぜい数メートルから十数メートルくらいだろう、と思っていました。

最近ノルウェーの新聞の電子版を見ていたら、奇妙な写真が載っていました。北海道の道東地方にもありそうな、草木のない吹きっさらしの丘のふもとの、ありふれた海岸線の風景なのですが、その沖合いに白っぽいビルのようなものが2つ建っている。よおく見ると雪山、いや、氷の山です。ファンタジーアニメのイラストのようなたたずまいに唖然としてしまいました(記事はこちら)。

カナダ東部、ニューファンドランド島のフェリーランドというところに、高さが46mある巨大氷山がやってきたとのことで、そのスケールを話題にしているのかと思いきや、それを見物しに来る人たちの車で大渋滞が起きている、というタイトルになっています。元ネタは他紙からの引用のようで、こんなでかいのは見たことがない、という地元の人のコメントや、今年の発生は600個を越えている、地球温暖化の影響でグリーンランドの氷河からの分離が促進されている… という内容の本文に、氷山とは何ぞや、付近で起こったタイタニック号の沈没にまつわるコラムといった、周辺情報へのリンクがついています。


フェリーランドはここ(Google地図データより)

これくらい大きいと、氷とか浮遊物とかいった概念を越えて、島といったほうがふさわしいようなたたずまいですね。ボートで接岸して、アイスクライミングなど試みる人が出てきそうです。

(アイキャッチ画像はノルウェー紙「aftenposten」電子版より)

【ノルウェー】船舶用トンネル

山国である日本では、道路や鉄道にトンネルがあるのはさして珍しい風景ではありませんが、基本平坦な大陸国はどうでしょうか。

ヨーロッパは、一見すると平原が広がっているように見えますが、アルプスほどではなくてもそこそこに山地があり、その付近の交通路には、日本と同様、橋梁やトンネルがあると思われます。アルプスといえば、先日世界最長の鉄道トンネルが開通した、という報道がありましたね。

地図を見てみると、北欧のスカンジナビア半島は中央部に山脈が走っていて、とくにその北西部に延びるノルウェーは、フィヨルド地形に象徴される複雑な海岸線もあって、交通路の状況は想像に難くありません。

ノルウェーには、延長が24kmに及ぶという世界最長の道路トンネルがあるそうで、ネット上で調べてみると、盛り場のネオンを思わせるような怪しげな照明が続く、トンネル内部の写真にいくつか出会えます。その割に路面は片側一車線、素掘りらしい側壁があったりして、意外というのか、内部状況はなかなかワイルドです。

笹子トンネルや関越トンネルなど日本の、特に高速道路のトンネルでは、出入り口にトンネル名が大きく書かれていたり、管理用の施設が建てられていたり、内部の交通状況や出口の先の天候・道路情報を知らせる電光掲示板などが設置されていたりしますが、この道路トンネルの出入り口の周辺には、世界最長をアピールするものがまるで見当たりません。関越トンネルというより、国道17号の三国トンネルや二居トンネルのような、ごくありふれたローカルトンネルの印象があります。

しかし全長24kmですからね、時速60km(分速1km)で走り続けたとしても、20分以上かかる計算です。関越トンネルでもアクアトンネルでも延々と地下の中を走っていると退屈してくるので、実際に走るとどうなるんだろう、と心配してしまいますが…

そのノルウェーが、今度は船舶用の航路?トンネルを作るという記事を見ました。

記事自体は例によって、建設の計画と完成後の予想交通量工事の開始時期などを淡々とつづっているだけなので、別のネット情報を見てみました。それによると船舶用トンネルの規模は全長1,700m、高さ49m、幅36m。中央道の下り線小仏トンネルが全長約1,600mなので、長さ的にはそこそこかと。

昔、マイティジャックという特撮番組があり、秘密基地の地下ドックに格納している潜水艦?を発進させるために、ドック内に水を流入させ、満水状態にするオープニングシーンに感動した記憶があるのですが、トンネル内を大型客船が航行する想像図を見ていて、ふとその場面を思い出しました。勇壮な主題歌を頭の中で響かせながら…

(アイキャッチ画像はNCA(ノルウェー沿岸管理局)のホームページより)

【アラスカ】アメリカに売却された日

帝政ロシアがアメリカ合衆国にアラスカを売却した1867年から、今年は150年めにあたります。地元の新聞が、アラスカの購入に関する条約の調印が行われた3月30日に、そのいきさつや今日的意義を書いています(記事はこちら)。

ロシアが支配地を放棄するにいたった背景とアメリカが購入した理由、当時の両国内での評判などが書かれていますが、気候変動による温暖化が北極に及ぼしつある影響、およびその状況を反映しているかのような、ロシア・アルハンゲリスクでの国際フォーラムでの人々の発言を取り上げているあたりに、今日的課題を感じます。

ロシア、アメリカの双方が、こうした極地帯の領有と開発の歴史を通じて、先住民の存在を軽視してきたと反省している、というのが、タイトルにある second thoughts なのかな、とも思うのですが、こうした視点に、ローカル紙らしさが見えるような気もします。