年別アーカイブ: 2018年

【カナダ】炭疽病で野牛13頭が死ぬ

人が、インフルエンザのようなウィルスによる伝染病や、破傷風のような細菌性の病気にかかるのと同じように、野生動物や家畜にも、こうした罹患による発症があります。
日本でも、鶏などへの鳥インフルエンザ、豚への豚コレラなどの感染が、最近ニュースをにぎわしました。

カナダで野牛が13頭、炭疽症で死んだとの報道を見ました。

炭疽症あるいは炭疽とは、炭疽菌の感染によって発症する、主に家畜や野生動物のかかる病気です。

炭疽菌とは、自然界の土壌中に常時存在している細菌で、皮膚に感染したり、呼吸器・消化器などに感染して重篤な病状を引き起こすものです。

ちなみに、似た言葉に炭疽病というものがあります。
これは植物の病気で、感染すると主に葉や果実が黒くなり穴が開いて、進行すると枯れていくというものです。

記事によると、報告のあった現場は、ブリティッシュコロンビア州北東部の、フォート・セント・ジョンという町の近郊にある農場で、一週間ほどのうちに野牛がばたばたと死にはじめたらしい。


フォートセントジョンはここ

現地の専門家は、野牛が農場の牧草を食べているときに、土壌中の不活性の菌の胞子に接触した可能性をあげ、同州で報告のあった最初のケースであると述べています。
また隣のアルバータ州でかつて発病があったことから、発症のメカニズムとして土壌の共通性をあげていますが、その一方で、気候変動で不活性の菌が土の表層に出てきたのではないか、と、気になる見解も下していました。

ヒトの発症はないことはないが極めてまれで、動物との接触により感染したとの事例はない、などと書いてあるのですが、土の中に普通に潜んでいる菌が悪さするのですから、うっかりと土いじりなどしていると、得体の知れない病気を仕入れる可能性はあるわけです。

この炭疽症、日本ではどうか、というと、国立感染症研究所のサイトによると、ヒトでは1994年の皮膚炭疽の報告、動物では2000年の牛の炭疽の報告を最後に発生していないそうです。

Photo via Good Free Photos

【ノルウェー】海底レストランとある島の写真

ラトヴィアのネット記事を見ていたら、面白い投稿写真があったので見てみました(アイキャッチ画像の赤枠部分)。

一見すると、港の岸壁か防波堤の端から、建物が海に沈み込んでいるように見えます。
どこかしら、津波か台風にやられた、被災家屋のような印象があります。

記事には写真が32枚投稿されていて、矢印キーで前後の画像表示に移れるようになっています。
中を見ると、船のドックのようなところで、駅でホームに下りる階段のようなものを作っている場面とか、
出来上がった階段?をクレーン船が運んでいる場面、伊豆半島にもありそうな磯場の海岸に沈めている場面などが写っています。

終わりのほうで、その内部のイメージ画像らしきものが出てきます。
部屋状のスペースの前面に広い窓があって、海中の様子が見えるようになっており、
テーブルと椅子が並んでいて、サービスのスタッフらしき人がいる…
どうもここで飲食ができる、というより、海中展望が楽しめるレストランのようです。

記事は画像だけで説明文のようなものはなく、正体がわからないので、
画像のイメージを元に検索して調べたところ、ノルウェーで建設中の海底レストランとわかりました。

場所はノルウェー南部 Lindesnes 県の Spangereid というところです。
近くにはノルウェー最古の灯台というものもある観光地で、まさにノルウェーの南伊豆といったイメージがあります。

Spangereid はここ(Google地図データより)

海中に設けられた構造物の中から、窓を通して海の中を眺められる施設というだけなら日本にも、沖縄とか房総半島の勝浦足摺岬南紀白浜紀伊半島などに海中展望塔というところがあります。モルジブには海底ホテルなるものもあるらしいし、規模の大小はあれど、飲食のできるところも世界のどこかにはあるようですが、そうした既存の施設に対し、ここはどのようなアピールをしているのか。

処々の検索記事を読むと、ここは世界最大の海底レストランだそうで、来年の開業を目指して工事が進んでいるらしい。
確かに上述のイメージ画像を見ると、正面に大きく開いた展望窓は映画館のスクリーンのようで、下手な水族館の水槽や、ましてや飛行機の窓程度の小窓が並んだ海中展望台などは、迫力の点では比較にならないように思えます。
世界最大の呼び込み文句を裏切らない、それなりの料理を提供するようで、旅行関連のサイトなどからは、なかなかの期待を集めているようです。

この写真の近くにもうひとつ、気になる画像がありました。


家が密集した島(赤枠部分)

海ではなく、アフリカのヴィクトリア湖に浮かんでいる島らしい。
投稿されている18枚の写真の中で、ケニアの国旗がはためいています。
旗のある陸地のほうでは、丘の上に地元の人らしき一団が座り込んで、
湖を見つめています。

それにしてもこの小さな島のたたずまいはすごい。
100m四方ほどの広さもないのに、
その中に民家だか商店だかが、都会の旧市街のように密集しています。
嵐や高波が例年、当たり前のように発生する、日本の沿海では考えられない風景です。

多くの家族が暮らしているらしく、
漁師らしき人たちのほかに、母親や子供たちの姿も見えます。
湖で獲れたのか、鮭のような大きな魚が水揚げされています。
「HOTEL」という文字も読める。誰が何しに来るのだろう。
しかしそれ以前に、これらの人たちはぎゅう詰めの島の中で、どんな暮らしをしているのかが大変気になります。

北国の海と南国の湖。
いずれの写真の背景にも、水と魚と人がいます。

ノルウェーの世界最大の海底レストランでは、窓越しに海中を泳ぐ魚を眺めながら、近くで取れた魚介類を優雅に食べている人がいるのかもしれない。
一方アフリカの湖に浮かぶ小島では、ぎりぎりの生活を送る人たちが、近くで取れる魚介類を食べて生きているのかもしれない。
その風景や生業に、上下も優劣もないと思いますが、
自然とのかかわり、水際を泳ぐ魚たちとの接点を比べたとき、
最大と名のつく海中の密室よりも、小さくても外界とつながっている島のほうが、
はるかに広大で自由、健康的に、自分には感じられるのです。

【極東シベリア】国際猫ショー

サハリンのユジノサハリンスクで、国際猫ショー(Международная выставка кошек)なる催しが開かれたそうです。

主催したのは国際猫連盟(World Cat Federation:WCF)という、素人目にはうさんくさそうな?組織で、アヴァンタージ(Авантаж)という猫愛好家の団体が企画したものであるとのこと(WCFのサイトはこちら)。品種もさまざまな猫74匹が、青年の部・成人の部ならぬ青猫?の部・成猫?の部のそれぞれに出展し、モスクワやハバロフスク、エカテリンブルクから招待された専門家が評価したり、人気投票が行われたりしたようです。
出展した猫たちとは別にセールも行われて、気に入った子猫を選んだり、のちに譲ってもらうべく飼い主と交渉したりするシーンが見られたようでした。

品種としては、シベリアン、アビシニアン、スコットランド、カーラー、ベンガルとかいった名前が並んでいるのですが、門外漢にはさっぱりわからない…

ロシアには、猫をならして芸をさせる芝居小屋があるそうで、あのなつかない連中をあやつれる人たちというのは、どんな才能を持っているのだろう、と常々思っているのですが、こうした猫ファンの底辺のような場所におじゃまする機会があれば、そのあたりの秘密がわかるのかもしれません。

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【スウェーデン】ヘラジカが通行人を襲撃

日本でも山間部やふもとの集落で、野生の獣類に出会うことがあります。
シカやサル、キツネ、カモシカといったところですが、たいていの場合は相手が人間を恐れているので、すぐに逃げてしまいます。
が、中には逆に人間に立ち向かってくるものがあります。クマやイノシシが代表選手です。
時折仕事で山に入った人が襲われて怪我をした、というニュースを見聞きします。

スウェーデンのネット記事を見ていたら、パンダみたいに目の周りにあざができた人が写っていました。
犬を連れて散歩中に、突然現れたヘラジカに襲われて、顎を強打され歯を折られ顔に大怪我をしたとのこと。
この事件に前後してもう一人、やはり犬連れで歩いていたときにヘラジカに蹴倒され、肋骨を折られ肺に穴が開くほどの怪我をした被害者の話が載っています。

この記事は、リンク先のいくつかのサブ記事をまとめたもののようで、それらを読んでいくと、事件のあったのはイェーテボリ(Göteborg)近郊のリンドーメ(Lindome)というところで、2つの事件のあと、警察から要請を受けた地元の猟師によって、ヘラジカが一頭射殺されたそうです。
ただし記事を読むと、バスの待合室にのこのこと入ってきたヘラジカを、恐れた人間が撃ち殺したようで、これが二人を襲ったヘラジカなのかは確かでありません。

確か日本でも、北アルプスの乗鞍岳の畳平で、バスターミナルに迷い込んだクマがパニック状態になって逃げ回り、ハンターによって待合室に追い込まれて始末されてしまった… といった事案があったような気がしましたが、こうしたカタストロフィに至る原因は動物側にあるのか、人間側にあるのか、よくわからなくなってきます。

ヘラジカというのは、北欧からシベリア、北米のカナダなどに分布する大型のシカです。
奈良公園のシカのように、大きな角を生やしているのですが、へらのような形をしているために、この名があるようです。

前述のヘラジカを倒した猟師の話として、この地方は果物がなるシーズンなので、それをお目当てにやってくるヘラジカと、人間が出会う機会が多くなっている、また人が連れている犬に、ヘラジカが神経質になっている、これが事件の背景ではないか、との推測を伝えています。

日本における獣害については、代表選手のクマ類による人身被害の実数が環境省のサイトに載っていました。
これによると毎年50名から100名くらい、多い年では150名ほどの被害者が発生していて、うち2~4名程度の死者も出ているようです。
クマ以外の動物による人的被害もあると思うのですが、資料を見出せていません。
その代わりではないですが、同じく環境省の調査結果として、その他獣類による農作物被害の文献を挙げておきます。こちらのトップはシカのようです。

シカというと人的被害というより、道路に飛び出してきて車と衝突するケースが多いように思いますが、
3ページの、農作物被害の円グラフから推察すれば、シカやイノシシ、サルによる、人への被害もあるのかもしれません。
10ページのグラフを見ると、クマ類による人身被害は年々増加傾向にあるようです。

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【チェコ】プラハ市の交通運賃割引制度

プラハ市ではこの10月から、学生と高齢者を対象とした運賃割引制度をスタートさせる、とのネットの記事がありました。

プラハ市民で60歳を超える人と、26歳までの学生は、一年1,280コルナのクーポンを購入できるというもので、このほかに1ヶ月130コルナ、3ヶ月360コルナのクーポンも用意されるそうです。
現在学生は10ヶ月で2,400コルナ、シニアは5ヶ月で1,100コルナのクーポンが買えるが、
この制度によって学生とシニアは年間60%以上、費用を抑えられるだろう、との関係者の声が載っています。

学生の場合、10ヶ月で2,400コルナということは、12ヶ月では2,400÷10×12=2,880コルナ。
これが1,280コルナになるのであるから、減少割合は(2,880-1,280)÷2,880=55.55…%。
シニアの場合は、5ヶ月で1,100コルナなので、12ヶ月では1,100÷5×12=2,640コルナ。
これが1,280コルナになるのであるから、減少割合は(2,640-1,280)÷2,640=51.51…%。
自分の計算では、お偉いさんが言うほどのコストダウンはなさそうなのですが、実際にはこれ以外に負担があるのでしょうか。

割引によって減少する収益の財源には、市の予算を充てるそうで、その額は2億800万コルナと見積もられているとのこと。

ちなみにチェコの通貨コルナ(CZK)は、10月30日現在、
1 CZK = 4.96 JPY ですので、1,280コルナは6,349円となります。
1ヶ月130コルナは645円、3ヶ月360コルナは1,786円です。
2億800万コルナは10億3112万2039円…

東京近郊であれば、1ヶ月645円の乗り放題切符なんて、2,3日で元が取れそうです。
しかもこのクーポンは列車、路面電車、バス、地下鉄とさまざまな交通機関で使えるようです。
現地の物価水準がわからないのでなんともいえませんが、これは相当の大盤振る舞いではないだろうか。
もっとも東京にも、70歳以上の都民を対象にした、
年間1,000円の負担でバスなどが乗り放題になるシルバーパスの制度(詳細はこちら)があるので、
行政施策としては珍しくないのかもしれませんが…

プラハ市の人口は約120万人で、日本でいえばさいたま市と同じくらいです。
さいたま市の平成30年度の一般会計の当初予算は約5,540億円ということで、
10億円程度の捻出は可能なのかもしれませんが、大丈夫なのでしょうか…

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【アラスカ】カブトムシによる森林被害

カブトムシというと、長い角を一本伸ばした、黒っぽい昆虫のイメージがあります。

小学校の夏休みにどこからか手に入れてきて、虫かごの中に押し込んで、スイカの切れ端か何かを与えていたような記憶がありますが、これの仲間がアラスカで大発生して、広範囲に樹木を枯らしているらしい。

現地の新聞の電子版によれば、spruce tree(トウヒ)が spruce beetle による集団被害を受けて、米国森林局の最新の発表では今年、558,000エーカーの森林が被害を受けた、2016年からの総被害面積は100万エーカー近くにのぼる、ただしこれは空からの観察なので、実態を反映しきれていない…

ちなみに1エーカーとは0.004平方キロメートルなので、55.8万エーカーは2,258平方キロメートル、100万エーカーは4,047平方キロメートルに相当します。参考までに、国土地理院の平成29年全国都道府県市区町村別面積調(URLはこちら)によると、東京都の面積が2,193.96平方キロメートル、滋賀県の面積が4,017.38平方キロメートルになっています。

spruce beetle などのキーワードで画像検索してみると、カブトムシというよりカナブンとかカミキリムシ、ハンミョウのような、積んだ材木の陰からこそこそと出てきそうな連中の写真が上がっています(アイキャッチの画像は spruce beetle とは直接の関係はありません)。
このカブトムシはもともとアラスカに住んでいて、温暖になると発生するので、大発生の原因として専門家は気候変動や、温暖化によって2年かかって成虫になっていたライフサイクルが1年に短縮された可能性を挙げているようです。

このカブトムシの専門サイトがあって、水をかけて落としたり、限定量の殺虫剤を使うなど、対策をアドバイスしているようですが、もし食い荒らされてしまったら、木ごと切るか、枯れた木を取り除くしか手はないそうで、規模の大小はあれど、庭の植木や果樹がダニや蛾の幼虫などにやられたときと同レベルの対応をするしかないことに、意外性を感じています。

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【リトアニア】廃棄物処理場付近の悪臭騒ぎ

どこの国でも規模や様態は異なれど、廃棄物の処理は大きな問題になっているようです。
廃棄物に関する最近のトピックとしては、極小のプラスチックゴミ、いわゆるマイクロプラスチックの拡散、
ゴミとは少し違いますが、微小粒子状物質などとも呼ばれるPM2.5による大気汚染問題などが挙げられます。
一方、ゴミにまつわる悪臭(異臭)をめぐっては、
現状、日本では産業廃棄物処理施設や不法投棄がらみの事案も散見されますが、
多くはいわゆるゴミ屋敷のような、一般家庭ゴミの範疇に収まっているように思えます。

カウナス・メカニカルバイオ廃棄物処理プラント(Kauno mechaninio biologinio atliekų apdorojimo gamyklos)という施設の近くに住む住人が、
当プラントの内部に立ち入って説明を聞いたとの記事(元のソースはこちら)が、リトアニアの新聞の電子版に載っていました。
アイキャッチの画像の中では、近所の住人と思われる20人くらいの人がみな鼻をつまみ、
中にはガスマスクといった物々しい風体をしている人もいて、何がなし異様な雰囲気が漂っています。
写真にはこのほかに、ペットボトルらしき廃物を固めたブロックや処理施設の内部、
敷地内の風景、施設の担当者の説明の様子が写っています。

記事には、カウナス近郊のラムチアイというところの住民から、
夜中に突然悪臭がして子供たちが咳き込んだ、アレルギーのような症状だった、
悪臭は深夜か早朝に発生する、風に運ばれて来るらしく、北風のときは感じないが、
南ないし南東の風のときに悪臭がする…
といった苦情があがり、処理施設に乗り込んで説明を受けたものの釈然とせず、
かえって疑念と不安が深まったとの文章が綴られています。

施設側からは住民に対し、処理施設内部では空気清浄機で悪臭を除いている。
ただし、ある種のバイオゴミの中には肥料化の過程で特殊な悪臭を出すものがあって、それは除くことができない。
また空気清浄機はアンモニアを分解しないが、フィルタで取り除いている。
今年の春、高さ35mの煙突を作って環境問題に対応している… といった説明がされたようです。


ラムチアイ(Ramučiai)はここ

当該施設は「カウナス地域廃棄物管理センター(Kauno regiono atliekų tvarkymo centras)」というところの付随施設らしく、
当センターのホームページに、この施設の稼働開始に関する記事が載っています。
アクセスのページの地図を見ると、確かにラムチアイの南東にあるようです。

ホームページには、受け入れ廃棄物の種類や料金についての説明もありました。
それによると、廃棄物の種類として木材、ガラス、紙、プラスチック、家電、タイヤなどがカテゴライズされており、
そのほかに有害な廃棄物として、蛍光灯や蓄電池、コンクリート、レンガなどが挙げられています。
日本ではゴミの分別については、自治体ごとに細かな違いはありますが、
可燃、不燃、資源の3つに大別され、収集しないとしているゴミもあるので、
その感覚でこのリストを眺めると、大雑把というのか、
紙とか家電とかリサイクルしないのだろうか、
タイヤやバッテリも引き取ってくれるのか、と意外な感に打たれます。
また、日本では一般ゴミと事業系ゴミが明確に区別されていますが、
ここの処理場の場合、個人の持ち込みもできるようです。

施設側の説明の中にもあった、バイオごみについては、
日本にもバイオに特化した廃棄物処理施設というものもあるようですが、
コンポストとして、自宅で肥料化できる装置がホームセンターなどで販売されていて、
においはするだろうけれども、咳き込むといった住人の苦情と、どうしても結びつかない。
昔は田舎に行くと、肥溜めからすさまじいにおいがしていましたが、
除臭の技術も進んでいるだろうし、それが原因とは考えにくいところがあります。

記事の最後には、
リトアニア国内に新たな焼却炉ができるらしい、
ゴミの処理によって生じた微粒子は広範囲に、時間をかけて蓄積するので、
子供たちや孫たちへの影響が心配だ、との、住民の声が載っていました。
臭いもそうですが、冒頭あげたマイクロプラスチックにしてもPM2.5にしても、
目に見えない、あるいは見えにくいものだけに、いっそう厄介な感があります。

かつては工場からの排気や排液が拡散して、いわゆる公害の原因になっていましたが、
現代は一般消費者の廃棄物が、新たな有害の種になっているのかもしれません。

 

【グリーンランド】極地性の植物が急成長

グリーンランドは北米大陸の北東、北極海と大西洋に面した陸地で、世界最大の島とされています。
面積はおよそ216万平方キロメートルで、日本の国土の5倍以上ありますが、
人口は沿岸部などに5万6千人程度を数えるに過ぎません(数値は国連統計局のデータベースUNDataによる)。

国際的な立場としては、デンマーク王国の一部ではありますが、
自治政府が置かれ、地元先住民を中心とした行政が行われています。
中心都市は南西海岸にあるヌークです。

そのヌークのラジオ局のWebサイトに、北極の植物に関する記事(元のソースはこちら)がありました。
日本の高山でも目にする、シャジンやチシマギキョウのような花の写真が載っています。
ちょっと気になったので読んでみました(ちなみに、同サイトには先住民の言葉によるページと、デンマーク語によるページの2つがあり、翻訳の都合でデンマーク語のページを参照しました)。

地球温暖化は極地の気温も上昇させている。気候が温暖になると極地のツンドラ帯の植物の成長が進行する。
極地性の植物の成長に関する研究成果が、科学雑誌「Nature」に掲載された。それによると:
-過去30年以上にわたって気温が暖かくなっており、植物の高さが上がっている。植物の高度化は気温の上昇に加担している。
ツンドラ帯には地球全体の半分を占める炭素が存在している。
もしツンドラ帯が融解すれば、その炭素が放出され、温室効果が促進される。
植物の高さの上昇が、ツンドラ帯の融解を進行させる2つの理由がある。
秋と冬においては、背の高い植物は積雪に対して有利であり、地表の寒さを防ぐことができる。
春と夏においては、植物が太陽光をより多く吸収するため、融雪が早まる。
分析は、グリーンランド、アラスカ、カナダ、アイスランド、スカンジナビア、シベリアの各地から採取したデータをもとに行われた…

というのが記事のおおまかな内容です。

この記事には、元の論文の一部を切り取ったもので不完全である、といった批判的なコメントがついていて、
植物成長=温暖化進行説はちょっと眉唾臭いのですが、
植物の生育と気候の微妙なつりあいについて、
考えるきっかけを与えているように思えます。

今日、都会においては、いわゆるヒートアイランド対策として、
ビルの屋上を緑化したり、道路や公園の植樹を増やしたりと、
緑の面積を拡大することがおこなわれていますが、
単純に植物を植えることはよいことなのだろうか、
生育が環境に与える影響を、多面的に考察することが必要なのではないだろうか…

写真の植物の高さも上がっているのか、記事には書いてありませんが、
冒頭あげたシャジン、チシマギキョウといった植物は小さいので、
山でうっかり歩いていると登山靴で踏んでしまいそうになります。
日本では富栄養化で、尾瀬などのミズバショウが巨大化している、といった話を聞いたことはありますが、
北アルプスで見かけるような花を咲かせる個体が大きくなる、という情景は、
ちょっと想像しづらいものがあります。

Photo via Good Free Photos

 

【カナダ】見捨てられた町とビットコイン

近年、仮想通貨に関する話題をよく見聞きするようになりました。

仮想通貨というのは、円やドルなどと同じく、
物の価値の尺度として流通し、支払いの手段になるものです。
ただし硬貨や紙幣のような実体も、中央銀行のような管理者もなく、
分散したコンピュータネットワーク上に、情報として存在しています。

取引を記録した、台帳に相当するものは、ブロックチェーンと呼ばれています。
これも分散ネットワーク上に存在していて、
その正確な更新には大量の計算(つまりは手間やコスト)を必要とするために、
これに成功したものには報奨として、新たな仮想通貨が発行され渡されます。
この報奨の仕組みはマイニング(mining)と呼ばれ、
そのために更新作業を行う人をマイナー(miner)という…

というのが概要ですが、詳細は参考書その他の情報源に譲ります。

仮想通貨をめぐる話題には、技術としての仮想通貨と、
投機対象としての仮想通貨の2つがあるように思います。
仮想といっても通貨ですので、
売買のタイミングによって為替の差益、差損が発生します。
またマイニング時点の相場によっては、マイナーに莫大な金融資産が転がり込みます。
現在のところ、仮想通貨の相場変動が大きいため、
投機の熱が一段とエスカレートしているように感じています。

仮想通貨にはいくつかあるようですが、
代表格になっているのがビットコインです。

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先日、このビットコインに関する、アラスカの新聞記事を見ました。
日本の山の中にもありそうな、川をせき止めたダムの写真が載っています。
情報技術の先端を行くような仮想通貨と、
自然のほかには何もなさそうな山奥が、どう結びつくのだろう…

記事は少し長めなのですが、
かつて製紙業で栄えたものの、工場の閉鎖後急速に衰えた町に、
ビットコインマイナーがやってきて、
短期間の間に、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長したかと思うと、
今度は価格の暴落に苦しむ様子を、物語調で語っているものです。

舞台となっているのはカナダ西海岸、ブリティッシュコロンビア州の、
ヴァンクーバーの北西にある、Ocean Falls という町です。


Ocean Falls はここ(Google地図データより)

ノルウェーのフィヨルドばりの海岸線の中に、ぽつねんとある町のようで、
記事の文言を借りると、この町に通じる航路から眺められる人類の唯一の痕跡は、
“a single power line stretching out from the dam” なのだそうです。

調べてみたところ、20世紀の初頭に製紙工場が置かれ、
一時はブリティッシュコロンビア州で一番の生産量を誇っていたようですが、
コストが上昇して採算が取れなくなり、1970年代に工場は閉鎖されたとのこと。
記事によれば一時5,000人ほどあった人口が、100人を割り込んでしまった。

前述のとおり、マイニングには大量の計算が必要で、
計算環境の安定した稼動のために、大量の電力を必要としています。
Ocean Falls に電力を供給している送電系統は、カナダの電力ネットワークにつながっておらず、
それに目をつけたあるビットコインマイナーが、
格安の費用負担での、大量の電力使用を認めてもらったらしい。
かつての工場のフロアを借り受け、データセンターとしてマイニングを始めました。

進出当初のビットコインの価格は400ドルだったのが、昨年の12月には20,000ドルにまで高騰。
ビットコインマイナーは投資者に対し、
2018年の末には6メガワットを使用し、年間570万ドルをマイニングで獲得、
2021年までには30メガワットを使って17,500ビットコインをマイニングする、
と気炎を上げていたそうです。

先日の北海道の地震では、非常の発電対策として、
老朽化した発電所をいくつか急遽立ち上げて、急場をしのいだ場面がありましたが、
そのときの発電量は20~35万キロワットでした。
1,000キロワット=1メガワットですので、これは200~350メガワットに当たります。
あくまで参考値ですが、マイニングが使用する電力の大きさがわかると思います。

ところが今年(2018)にはいってから、ビットコインの価格が急落し、
設備の増強や株の上場を考えていたマイナーは大きな打撃を受けます。
電力使用量は1メガワットにも届かず、
目標値を当初の6メガワットから1.5メガワットに下方修正しました。

このビットコインマイナーは、転んでもタダでは起きない生粋のアントレプレナーらしく、
冷却ファンの代用に水冷システムを開発して売りにだそうだとか、
計算機が発生する熱で水を温めて、鮭の孵化場に送ろうだとか、
本業を補完するいろいろなビジネスアイディアを考えているようですが、
文明世界からははるかに離れた未開地でもあり、前途が見通せない状況にあるようです。

記事は、Ocean Falls にやってきたビットコインマイナーに対する、
住民の心境を紹介して終わっています。
本質的には、”the pure conversion of electricity into money” であるマイニングを、
懐疑的に見る人がいる一方で、
電気を使ってくれて、それで町がにぎわうならそれでいい、という人もいる。
いずれのコメントの裏にも、年寄りばかりになった町に誰か、
特に若い人がやってくることへの期待がにじんでいました。

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新聞記事によれば、マイニングに適する場所として、
寒冷で、十分な水力発電量があることを条件に挙げています。
以前は新彊ウィグル、内モンゴル、黒龍江省など、
中国の奥地が注目されていましたが、
現在は炭素排出などの問題から、北欧や北米にマイナーの関心が移っているそうです。

記事の写真や、Ocean Falls の地理・歴史を読むと、
自分にはどことなく、北海道のかつての炭田地帯や、
利用者が少なくなって廃止に追い込まれたローカル線の風景が思い出されてきます。
少子高齢化に伴う人口減少で、地方自治体の中には将来の存続を危ぶむところもあります。
こうしたマイナーのアイディアが、過疎化、限界集落対策のヒントになるのかも。

日本ではコストの面で難しいかもしれませんが、将来シベリアなどで、
こうした電気売り、エネルギー売りがビジネスになるのかもしれません。

ビットコインのブームがいつまで続くのかはわかりませんが、
見捨てられた町にとって救世主になるのでしょうか、
それともかつての製紙業のように、
大自然の中に突如として割り込んできて、
大騒ぎをした挙句、廃墟を残したまま去ってゆく…
といった歴史を再現して終わるのでしょうか…

Photo via Good Free Photos

【スウェーデン】スウェーデンデイ

先日東京のスウェーデン大使館において、「スウェーデンデイ」なるイベントが催されました。

国の名を関した、何とかデイという催しは時々あります。民族衣装を着た人を先頭にしたパレードであったり、その国の物産や軽食類を販売するプロモーションであったり、ステージで音楽やパフォーマンスを実演したりと、いろいろなパターンがあります。この日のスウェーデンの場合は、製品の展示、販売もありましたが、メインは講演にあるように思えました。

大使館の建物内の一角に、大学の階段教室のような小講堂があって、その中でレクチャーがあったようです。そのうちのひとつを聞いてみました。

lecture
開始前の様子

スウェーデン発祥の家具量販店である「IKEA」の人が英語で、いまはやりの?同社のサステナブル戦略を説明していました。家具というとどうしても木材が主な原料になるため、森林の保護だとかリサイクルだとかいった分野で、これこれの貢献をしていて今後こうしたいと考えている… といった内容でした。

program
この日の講演者

イベントを主催していたのは一橋大学の学生さんで、スウェーデンからの留学生を交えて、かの地のお菓子を振舞ったり、現地の説明などをしていたようです。

なので、出し物に関してはやや素人臭さがありましたが、さすがに学生さんということからか、全体的にアカデミックな雰囲気がありました。

大使館にもいろいろあって、オープンに来客を迎えるようなところもあれば、来訪はすべて本国に伝えるので事前に英文で伺いを立てろ、などと、ガチガチのお役所的対応をとるところもあります。個人的には大使館にはいい記憶がないので、ここの場合はどうなのかな、と気をもんでいましたが、イベント開催という事情もあったせいか、拒絶的な印象がなかったのはよかったと思います。