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【ラトヴィア】報道に見える日本観

ラトヴィアと日本はかなり距離を隔てていますが、情報化社会の網はお互いをカバーしていると見えて、現地の報道記事にも、時折日本の話題が出ています。

2007年に天皇皇后両陛下の訪問があったということもあってか、このたびの退位に関するいきさつは興味を引いているようです。全体的には時事問題、政治経済分野よりも、どちらかというと観光案内的な内容が多く、京都や浅草の正月風景の紹介や、花見の記事などもありました。利害や損得の側面がなく、平和というのか、どこか現実感のない、やはり遠い国なのだ、という思いがします。

反対に紙面(電子版なので画面?)に「Krievija(ロシア)」の文字を見ない日はありません。かつてソ連の一員だったということもあるのかもしれませんが、政府要人の発言と一挙一動、食料エネルギー問題から安全保障政策まで、東の大国に対するぴりぴりした緊張感が伝わってきます。

そんな中で、日本の一地方であった事件が報じられていました(記事はこちら)。内容自体は、公園の公衆トイレの屋根裏で暮らしていた男が捕まったという、新聞というよりはテレビのバラエティ番組か、エログロ週刊誌あたりが取り上げそうな他愛のないものです。ラトヴィア紙はBBCの報道を引用したらしく、BBCは毎日新聞の英語版を情報ソースとしています(日本語の毎日はこちら)。

BBCの名前を出していますが、ラトヴィアの新聞の感心なところは、子引きのBBCの文章を鵜呑みにせず、原典(毎日のテキスト)にあたって、情報の正確さを担保しているところです。この事件の舞台となっているのは大分県の臼杵市なのですが、BBCは西南日本のウスキとしていて、大分という言葉は出していない。そこをラトヴィア紙は Oita prefektūrā と補っています。またBBCの訳には誤りがあり、屋根裏部屋にペットボトルが300本以上あったというところを、500本のプラスチックボトルとしているのですが、こういうところも丸写ししていません。BBCは臼杵市役所が提供した、事件現場の純和風の公衆トイレの外見写真を、毎日と同様引用していますが、ラトヴィア紙は某SNSからとして、独自の画像を載せています(これがその、純和風の建物の内部なのかどうかはわかりませんが)。

ラトヴィア紙のタイトルを直訳すると、「3年間公衆トイレに隠れていた日本人」となるでしょうか。BBCは「3年間日本のトイレの上で暮らしていた男」、毎日の英語版は「3年間大分県の公衆トイレの上で暮らしていた男を発見」。3年間、公衆トイレというキーワードで読者の注目を狙っているところは同じですが、「住む、暮らす」ではなく、「隠れている(潜伏=slēpjas)」という言葉を使っているのが興味深いところです。男が逮捕されたということで、逃亡中の犯罪者と考えたのでしょうか。

例によって文章は、発見のいきさつや現場の様子、その後の対応などを淡々と伝えているだけですが、この出来事の何が彼らのアンテナにかかったのだろう、かの地にはこういう住生活?をしている人はいないのだろうか、潜伏する、という言葉に彼らの琴線に触れる何らかの意味があるのだろうか… と、想像をめぐらせてしまいました。

(アイキャッチ画像は電子版ラトヴィア紙「vesti.lv」より)

【一般記事】113番元素

日本の理化学研究所が研究と実験を重ねた結果、合成に成功した113番の新元素が「ニホニウム」と命名されたことは、昨年報道されたとおりです。

ラトヴィアの新聞で、このニホニウムを含めて、新たに命名された4つの新元素に関するミニコラムが載っていました。すべて人造でアメリカとロシア、日本によって作られた、地名や人名にちなんで命名された、などと、簡単な紹介があるだけですが、ニホニウムについては、「太陽が昇る土地」を表す日本語を翻訳して名づけられたとあります。

地球上には日本を指して、日出る処の国、と説明するところがあるようです。欧州やロシアなど、日本から遠く離れた地域で聞くことがあります。遣隋使の小野妹子が隋の煬帝に渡した国書にあった文言でしたか。

自分としては、ニホニウムというのは日本という言葉に由来しているとしか認識できないし、では日本とは何か、と外国人に問われたら、それは国名である、と答えると思います。しかし、日の本(ひのもと)一のこの槍を~というように、自分たちの国を太陽の誕生の地とする表現もあるので、このコラムの記者の解釈も正しいのかもしれない。

国名の由来、国号の意味については諸説あるようですが、普段意識することもなかったので、異国の人の指摘に、なるほどと考えさせられた次第です。